タッちゃんのおはなし。




この記事がアップされる頃、わたしは明日9日からスタートする8月のなっがーーーーーい夏休みの幕開けに心を躍らせる暇などなく、2週間におよんで自宅を空にする準備に追われています、きっと。

夏休み中にも記事や書下ろし電子書籍がアップ/配信されるようにいくつかの仕込みもようやく終えたし、絵力が凄すぎると巷で話題の(?)SONOKO先生の最新記事アップの予約も済ませたばかりだし。さてほんなら――。


アメリカのキッズだった頃、日本から転入生がきました。黒目がちの大きな目にツヤツヤとした長いまつ毛と褐色の肌を持った男の子。英語も話せないくせにコミュ力だけはやたらと高いタッちゃんは、瞬く間に女の子たちから「セクシー」などと言われて人気者になりました。

噂によるとタッちゃんは、日本ではわりと大きなドラッグストアを営む一族の息子だか孫だかで、でも両親がなにやらゴチャゴチャしているとかしていないとかで、おじいちゃんとおばあちゃんが悠々自適に暮らすこの街に「タッちゃんのセイシンメンをダイイチニカンガエタ末」に住むことになったとかなんとかかんとか。

タッちゃんはいつも、誰といても、足を鳴らしケタケタと笑っていても、目の奥が泣いてるみたいに寂しそうで、転入生である自分に構ってこないクラスメートを前髪を盾にじっと睨みつけていることも少なくなくて……その矛先は早めにわたしに向けられました。

プロムではないのだけど、うちの学校ではわりとダンスパーティが催されることがあった。日本で数えるところの小学生な年齢なんだけど、男子が「僕と踊ってくれない?」と女子を誘い、エスコート。こうやって向こうの男の子は子どもの頃から女の子を「女性として」もてなすこと、つまりレディーファーストを身に着けていくんだ。

日本から移り住んできたばかりのタッちゃんは、当然そんなシステムなど知らない。しかし持ち前のモテ気質なのか調子乗り気質……じゃないや、コミュ力の高さなのか女の子たちを楽しませ笑わせることにとても長けていた。


タッちゃん:「オレは麗ちゃんとだけはなにがあっても踊らない」
女の子たち:「なんでー」「どうしてー」「すてきー」「いけてるー」
麗ちゃん(わたし):どうせロクなこと言わねーんだろ、と仏頂面

タッちゃん:「麗ちゃんの肌はざらざらしてるから」
女の子たち:クスクスクスクス

麗ちゃん(勝気):「そんなんだから親に捨てられるんだ」+中指おっ立て
タッちゃん:「なんだと!」
麗ちゃん:「捨てられっ子、ばーか」+中指おっ立て


――こうして書くと、わたしもたいがいだなと反省しきりなんだけれど当時のわたしは生まれ持ったアトピー体質で常に肌がブツブツ・ざらざらとしていて「おませ」なアメリカの小さなレディとして、それは最大のコンプレックスでもあった。

そんなわけで、わたしはタッちゃんが大嫌いだった。女子には人気のタッちゃんだったけど可愛くない性格が災いし、男子たちからは軽いイジメのようなものをうけているのを知っていたけど助けてやんなかった。いつしかタッちゃんの『引き取り先』が決まったようで彼はあっさりと日本に戻っていった。


タッちゃんのことなんて、すっかり忘れた数十年後。海外ネームでアカウントをもっていたとあるSNS経由でメッセージが届いた。送信主は、この流れ的にも勿論タッちゃんである。

「プロフィール欄に作家だと書いてあるけど、君は成功者になったの? だとしたら元クラスメイトとして、今の僕にできる最大限のお祝いをさせておくれよ」みたいなナンパなことが書かれてあったと記憶している――。


男の子はえてして、好きな女の子に酷いことを言う。


なぜ言うのか?
答えはいたってシンプルで「好きだから」「かまってほしいから」。

いわゆるひとつの鬱陶しいこと限りない構ってちゃんではなく、『こっちを向いて! 僕のことを見て! だって好きなんだよ、君のこと。でも好意の示し方を僕はいまいち知らないんだ……だから傷つけることを言っちゃうかもしれないけど、これは本意じゃなくて……好きなんだよ、君のこと!』みたいな意味である。

男子も子どもなら「捨てられっ子、ばーか」と、中指をおっ立てちゃう女子も同様に子どもである。仕方ないのだ、お互いに子どもだから。通常の場合、こういった経験を男子も女子も「小学校の高学年~高校生」の間でいくつか済ませているものである。ふつうに“子どもならではの恋”をいくつか経たならば。

そして知るのだ。

  • 男子って、好きな女の子のことをからかう。
  • 男子って、いくつになっても子どもだ。
  • 男子の好意のサインは、わかりやすい。
  • 男子って子どもだから、女の子の「目で見て分かるぶぶん」をすぐにイジる。
  • 男子の「からかいという建て前」の裏にある「本音・本心」を。






大人タッちゃん:「あ、アトピー治ったんだ? 肌つるつるじゃん」
大人麗ちゃん:「超傷ついたからな、あの時」
大人タッちゃん:「ごめん。麗ちゃんは俺のこと無視してたから」
大人麗ちゃん:「ほんと嫌いだった、あんたのこと」
大人タッちゃん:「本当にごめん。今さらで遅いけど」
大人麗ちゃん:「今では肌はつるつる、中はザラザラしてて気持ちいいと言われる仕様に」
大人タッちゃん:「ホントダー(n*´ω`*n)」


中指はもう立てませんが据え膳は食うしふぁっくもします。この話が実話かどうかはべつとして。



❤本日の一曲:愛し君へ/森山直太朗+中田裕二(椿屋四重奏)








 

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