アトピーに悩み、ステロイドを常備薬としていた15歳女子の人生が花開く気配を見せたあの日・あの時・あの場所で


つづき)――イヤホン散歩事変から、どのくらい経った頃だったかは忘れてしまったけど……廊下に面している大窓から「見 っ け た ー!!!」と絶叫に近い声が勢いよく飛び込んできたのは、2時間目の休み時間だったか3時間目の休み時間だったか。

あの日のモシャモシャ頭君が満開の笑顔で
「昼休みにもう1回来るから、そこにおってな!!!」

彼はわたしを指さし「み み! 約束やで!」とさらに大きな声をはり上げて、高校生にしては背の高い数名の仲間を引き連れ、走り去っていきました。次期キャプテンだ……××先輩だ……知り合いなの? みみってなに? どういうこと? ざわめくクラスメートたちから質問攻めをうけたけど、なにひとつまともに答えられない。だってわたし自身が「どういうこと?」と思っていたから。

4時間目の授業が終わろうとする頃、クラス全体が妙にソワソワふわふわと落ち着きがない。それはいつもの「昼休みの食堂という戦場に駆け込む前」の色めき立った様子とは明らかに異なる。

高校生活が始まって2か月と経たない15~6歳の連中にとって、クラスメイトの1人がちょっぴり有名な先輩に「目をつけられたらしい」というのは大ゴシップ。一体なにが起こるの?! ワクワクが止まらない彼らの視線がずぶずぶと刺さって頬が熱い。


アトピーに悩む帰国女史の15歳の女の子が、大注目された日


昼休みの到来を告げるチャイムが鳴っても誰一人、教室から出て行かない。それどころか立ち上がりもせず、皆が皆廊下側の大窓に顔を向けている。学校指定の室内履き専用スリッパのパタパタ音もあまりに数が多いと轟音になるということをこの時、教室にいた誰もが知った。

どんどん近づいてくる『地鳴り音』に顔をこわばらせた15~6歳たちは、心配なのか興味なのかちらちらと音とわたしを見比べる。教室の前扉の窓、大窓、後ろ扉の窓に――顔・顔・顔。モシャモシャ君がさっそくわたしを見つけ、またしても大きな声で

「み み!」

と叫ぶと、教室の中を覗こうと身を乗り出していたおよそ20個の顔がわたしをとらえた。センター分けの長い黒髪でやけにスタイルの良い長身の女子が「ちょっと入るで、ごめんな」と言いながら後ろ扉を開け、ずかずかと大股開きで近づいてきた。

「名前、みみっていうの?」
「麗子」
「みみちゃうやん!」
「ええねん、みみやねん!」

豪快に笑いながら教室に入ってきたモシャモシャ君に続いて、背の高い面々がやっぱりずかずかと我らが1年生の教室に入ってきて、あっさり見事に囲まれた。

うう……圧迫感がすごすぎる……なにこの壁感……。
クラスの皆がこの状況をどんな面持ちで見てるのかすら、まったく見えないよ……。


アトピーに悩む帰国女史の15歳の女の子が、大必要とされた日


黒髪センター分けは、漫画のように両腕を腰にあて若干アゴを上げてわたしを見下ろし、よく通る声でスパーンと言い切った。

「うちの次期キャプテンが、直感でみみのことを『うちの部に絶対に必要!』って思ったんやって。だから男バスのMGになってな、みみ!」

「はぁ?」
「私はみみより1歳上のMG、モシャモシャと同じ学年のセンター分け。男バスのMGになんかなりたくないんやろ? そのくらいのコの方がちょうどええわ。(読モをやってるような目立つイケメンの)先輩らと仲良くなりたいからMG希望とか……多すぎでうっといねん」
「わたし……ラグビー部のMG」
「えーー! ちょっとどういうこと?!」
「マジで?! 嘘やん?!」

パワーバランスは完全に、センター分け>>>>>モシャモシャ(次期キャプテン)――らしい。センター分けに睨まれて慌てるモシャモシャ君は言った。


アトピーに悩む帰国女史の15歳の女の子、「取り合いされる」も超クール


「ラグビーのMGって、何人おる?」
「わたし入れて6~7人くらい?」
「じゃ、1人くらい兼用でもいいやろ」
「なんでよ! そんなん聞いたことないわ!」

センター分けの鋭い突っ込みにたじろぐモシャモシャ君の背後から、マサイ族の酋長のような色の黒~い細くて長~~~い男子が顔を割り込ませた。

「ごめんな、急に。こんなんなぁ……囲まれたら昼飯も食われへんやんな(笑) 俺は3年のキャプテンのマサイ。ラグビー部の顧問ってA先生やんな? キャプテンはW辺やんな?」
「はい」
「じゃあ、近日中にA先生とW辺と協議してみみちゃんをラグビー部と男バスの兼用MGにしてもらえるようにするから、ちょっとだけ時間くれる?」
「……くれるって。わたし、そんなにMGしたくないけど」

「おい、マサイ~(笑) みみはやりたくないって言ってるや~ん」

マサイ族の仲間とはとても思えない、もんのっすっっごい美少年がキラキラ粒子と薔薇の花びらを振りまきながら(イメージ)顔と口を挟んできた。なんだこのウソみたいなイケメンは。今までどこに隠れてたの……?! 『壁』の向こうから女子たちのうっとりしたようなため息が漏れ聞こえる。


アトピーに悩む帰国女史の15歳の女の子、きわめて素直


マサイ:「……みみちゃん、そもそもMGしたくないん?」 モシャモシャとセンター分けがマサイとわたしを交互に見やる。
美少年:「みみはMGしたくないんやんな(笑)」
わたし:「してもいいです」


イケメンの力は偉大なのだ。
(つづく/本日まで夏季休暇。明日から3日ほどは激々々々務)


❤本日の一曲:小林明子/恋におちて-Fall In Love




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